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『神の雫』原作者が語るピーロートワイン Vol.4

150年以上のワイン造りの伝統を持つ名家が南仏ラングドックで最高のワインを目指す

バロン・フィリップ・ド・ロートシルトは1998 年に南仏ラングドックのドメーヌを購入し、バロナーク・ブランドを創設。
地元のヴィニュロン・ド・シュール・ダルクが葡萄を厳選し、ロートシルトのチームがワインを醸造するという形で、南仏のテロワールを生かした最高のワイン造りを目指している。
ワイン漫画『神の雫』の原作者、亜樹直こと樹林ゆう子氏と樹林伸氏が、バロナーク シャルドネ2018、バロナーク ブラン2019、バロナーク2017、バロナーク2018をテイスティングした。

ヴィンテージによる個性を楽しみたい

ピーロート:まずはバロナークの白から。2018年がシャルドネ100%で、2019年がシャルドネ96%とシュナン・ブラン4%のブレンドです。ちなみに名称は、シャルドネ100%の18年は「バロナーク シャルドネ」と呼んでいます。
ゆう子氏:ヴィンテージによってブレンド比率が違うんですね。比べて飲んでみると……4%のシュナン・ブランが効果的に使われている感じがして、個人的には19年の方が好き。
伸氏:僕は2018年のほうが好み。シャルドネの酸に品があって、抵抗なくスルスル飲める。南仏でもラングドック地方は南ローヌに近いワイン造りをしていて、ルーションはスペインの産地カタルーニャに似ているといわれるよね。確かにこれも、南ローヌのワインに共通するニュアンスがある。ローヌの方がもっと梨のようなアロマが強いかな。

ゆう子氏:19年はトロピカルなニュアンスがあって、東洋のスパイスの香り、白い花の甘い香りもある。18年は確かに洋梨のアロマが感じられるよね。

伸氏:樽の使い方もうまいね。控えめで、バニラっぽさいが鼻につかない。

ピーロート:新樽と使用樽の比率は半々とのことです。

伸氏:なるほど、いいとこ取りの樽の使い方ですね。余韻も長いし、ミネラリティも感じるけど……それにしても『何にも似ていないワイン』だね(笑)。

ゆう子氏:ユニークだよね。2018年と2019年でまったく違うワインなのも面白いし。

伸氏:ラングドック・ルーションのワイナリーって、赤も白もいろいろな葡萄品種を使ってるよね。ドメーヌの栽培マップを見ると白葡萄はシャルドネしか植えていないけど、19年ヴィンテージにはラングドックでは珍しい品種のシュナン・ブランを使っている。赤のバロナークにしても、ボルドー系と南仏系と、多彩な品種が使われている。だから、たくさんの絵の具を使って絵を描くみたいに、創作度が高いワインがつくれるのかもしれない。

ゆう子氏:なるほど、そうかも。ブルゴーニュのように、ワイン法で決められた単一品種という縛りもないし、自由に設計図が描けるよね。

伸氏:ワインのイメージはどう? 2本とも、心地よいワインだと思うけど……。

ゆう子氏:そう、軽くて柔らかいコート着た時の、ふわっと包まれるような。しなやかで着心地がよくて、脱ぎたくなくなる感じ。

伸氏:さすがロートシルト家のワインってことだよね。このワイナリーを買収してから畑と醸造施設の改良に5年かかったそうだけど、クオリティのためにそれだけの時間とお金をかけられるのは、体力のあるロートシルト家ならでは。

ゆう子氏:ヴィンテージごとにこれだけ個性が違うと、続く2020年、2021年ヴィンテージはどんな味わいになるのか、その変化も見てみたくなる。

バレエの群舞のような美しさ

伸氏:それにしてもラングドックでこれだけのクオリティのワインが造られていることに刮目させられるよ。70年代までは、南仏のワインといえば安価なテーブルワインが多い印象だったけど、志のある醸造家が高品質のワインを造り出してから、どんどん流れが変わってきた。今は掘り出し物ワインを探すのが楽しみな産地だ。

ゆう子氏:ラングドック地方はほぼ全域が地中海性気候で、夏は雨が少なく乾燥していて、冬は
比較的温暖でそこそこ湿度もある。葡萄にとってはとてもいい環境で、病気になりやすいといわれるグルナッシュでさえも、ラングドック地方では健全に育つ。葡萄が育ちやすい環境だから、多品種が作れるし、醸造家にとってチャレンジしやすい産地ともいえるね。

伸氏:なんたってフランスで最も広いワイン産地だもんな。ラングドックでこれほどのシャルドネができるなら、国際的な市場価値も上がってくるよ。ちなみにバロナークの白はいくらですか?

ピーロート:両方とも7,645円(税込)です。

伸氏:お買い得ですね。値上がりが著しいブルゴーニュよりいいかも(笑)。

ゆう子氏:それに味わいにカジュアルさがあって、守備範囲の広いワインだから、わりとどんな料理でも合わせられそう。

伸氏:確かに。ブルゴーニュの特級ワインとかだと、香りもすごいし、料理が負けちゃうことがある。ワイン単体で飲むと素晴らしいけど、ワインを食中で楽しむという意味では、それも微妙だよな。

ゆう子氏:そう。ブルゴーニュの特級ワインなんかは、いわばみんなソリストだけど、このワインはバレエの群舞のよう。舞台の後ろにいて、美しいし存在感はあるんだけれど、自己主張が強すぎない。だから個性の強い料理でも、これならたぶん合わせられる。

伸氏:その通りだね。海のものでも山のものでもいけちゃう感じ。
バロナーク シャルドネ (2018)
バロナーク ブラン (2019)

謎解きしたくなる現代アート

ピーロート:次に赤です。2017年と2018年、どちらもメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランといったボルドー品種に、シラー、マルベックという南仏系品種をブレンドしています。最も多く使われているのはメルローです。

伸氏:おお、ふたつを比べると香りがずいぶん違う。別のドメーヌのワインみたいだ。2017年はメルローがしっかりしていて、ブラックチェリーのニュアンスが強い。2018年はカベルネ・フランの香りが華やかで、アロマティックだね。

ゆう子氏:2017年はタンニンが柔らかく溶け込んで、飲み頃になっている。2018年はいかにもグッドヴィンテージに造られた複雑ないいワインだけど、少し固さがあるから、もうちょっと熟成させてもいいかな。

伸氏 :そうだね。18年は複雑さが備わっていてリッチなワイン。ガチガチに固くはないけど、基本的には長熟タイプなんじゃないかな。

ゆう子氏:どちらも高級感があるし、飲み応えもある。ちなみにお値段は?

ピーロート:7,645円(税込)です。

伸氏:それぐらいなら、週末ちょっとしたご馳走とともに飲むのにはぴったり。

ゆう子氏:2017年も2018年も、なんというか、深堀りしたくなる魅力が備わっている。たとえば、現代アートのような。現代アートって、パッと見てわからなくて、何をイメージしてるのかな、って興味がそそられる。そんな謎解きがしたくなるようなワインだわ。
伸氏:僕のイメージだとむしろモダニズム建築という感じ。実用的というか、さまざまな葡萄の個性を要素として、おいしさとはなにかをゴールにして組み立てているというか。例えばマラルンガ・ソファのように、座り心地のよさとはなにかを追求して結実したアート作品みたいな……。
ゆう子氏:ややこしいけど、つまり最初に素晴らしいワインという目指すべきゴールがあって、ではラングドックのテロワールの中でどの葡萄を選び、どういう醸造方法でいくかと追求していって、結果造られたワインがこれ、という意味かな?

伸氏:まあそんな感じ(笑)。要するに滑らかなタンニンと、ほどほどの果実味と柔らかい酸。この見事なバランスがアートを思わせるってことだね。
バロナーク (2017)
バロナーク (2018)

ギフトにピッタリなワイン

ゆう子氏:葡萄は密集した畑で育てると、ほかの樹より多くの栄養を摂ろうと頑張り、根を深く張ることで強く育つ。そんな葡萄からは果実味の豊かな実が採れる。だから「高密度」で植える生産者が増えているわけだけど、バロナークでは、この産地の平均(1haあたり3000本程度)よりはるかに多く、1haあたり7500本から4500本を植えているとか。果実味豊かなワインができる理由のひとつがこれなのかもね。

伸氏:それはすごいね。高密度で植えると、工作機械が入りにくくなるし、手間もかかるけど、品質を優先したってことだね。オーパスワンともアルマヴィーヴァとも違うけど、ロートシルト家がラングドックで極上のワインを目指して造るとこうなる、ということなんだろうね。産地は違えど、ロートシルト家の風格はちゃんと備わっている。

ゆう子氏:それなのに、赤もまた料理を選ばない柔軟さがあるから、使い勝手はいい。イタリアンでも中華でもいけそう。

伸氏:2018年はやや硬いけれど、それでも開くまでに手間がかからない。いま、注いでから30分ほど過ぎてるけど、驚くほど柔らかく開いてきている。

ゆう子氏:そういう意味では、このワインは高級感もあるし、ギフトにぴったりかもね。ボルドーとかだと、贈ったものの、タイミング次第では渋くて飲みにくかったりするし。

伸氏:そう、だから若い高級ボルドーを贈るときは、箱に「しばらく開けないでください」って書くしかないんですよ(笑)。

ゆう子氏:そんなのもらった人はびっくりだよね(笑)。

伸氏:このバロナークなら、ボルドータイプだけど、開くのが早い。18年を贈るなら「大きめのグラスでゆっくり飲んでください」って書けばオーケーだ(笑)。

ゆう子氏:早めに開いてくれて、かつ高級感もあるワインって、ありそうで少ないんだよね。料理と合わせるのも難しくないし、白も赤も今後が楽しみなワインです。

Profile 亜樹直(あぎ ただし)
漫画原作者。姉弟の共同ペンネーム。「モーニング」誌上にて『サイコドクター』『サイコドクター・楷恭介』『神の雫』『怪盗ルヴァン』執筆後、2015年『マリアージュ〜神の雫 最終章〜』連載開始。2008年、グルマン世界料理本大賞の最高位「Hall of Fame」を日本人として初めて受賞。2010年、フランス農事功労賞シュヴァリエ受勲。そのほか受賞多数。